さよなら、が
きすの合図だった。
僕らのルール。
噛み砕いたあめだまを、
口移し。
きみが笑う。
繋いだ手、
泣きながら握る
別れよ、て
僕から言うよ。
最後のきすは
....
どうしたってこの繋いだ手が離れるなら
気休めの言葉なぞでなく
指を絡めた2つの掌を繋ぐ、
小さな楔を打ちこませて
膿んだっていい
どろどろに蕩けて2人でひとつのかさぶたに
なれたらいい ....
凍える指先を握り締めて暖めてあげる、
なんて優しさは春になっても芽生えてこないよ
いつまでも冷えた体は雪の下で
土の僅かな温もりを頼りにして、
来る保証のない春と
抱き寄せてくれる腕を、 ....
愛しすぎるきみの、
傷痕に触れたい
温度のない、からからに乾いたかさぶたに
ぼくが涙を落としたところで、
なにひとつ変わることもないけれど。
ただ。
花に水をやり、
朝にカーテン ....
夢の中で口付けても
隣で眠るきみの唇は乾いたままだ
いつか
きみの背中がぱっくり割れて
そこからシロツメクサがぽろぽろとこぼれてくる
夢を見たことを
思い出したけれど
やっぱりき ....
いつだって、囁く愛とは反比例。きみからの電話、「好きだよ」の言葉。
起きてると、たまに気付いて後ろから抱きしめてくれた。温かかった。
キスマーク。見えないとこに残す事さえ、きみの許しはでな ....
くるくる回す 指先で
逃げ回る蜘蛛の巣を絡めとる
半透明の、繊細な竜巻
ねとねと、と、べたつく両手でも
消えたい心は掴まえられないだろうか
狡猾な私では、無垢な蝶みたいに
上手に罠 ....
見上げた空に
キノコ雲があることを恐れるほど
人を信じないきみだった
踏みしめたコンクリートの地面は
ひび割れてきみを飲みこんだりしない
そこで眠っている猫のショコラも
柔らかな手 ....
肌の白さから浮き上がるみたいな
ブルーのアイシャドウに
縁取られたきみの目蓋を見つめる
波が打ち寄せる海岸、と
黒いアイラインの地平線
目蓋から透けるブルーを見つめて、
きみが海の夢を ....
ひっそりと胸で眠ってたそれは
泣き明かして、幾らか水分を失った体のどこからか
ひとすくいのオアシスを見つけて
いつのまにか根を張っていた
絹に似た根がゆっくり体の中を支配していくのは
しっと ....
見慣れない、笑った顔が愛しくて、きみを擽る手がとまらない。
キスマーク。消えたら私、思い出の中にさえすら残れないのかな。
幸せなはずの言葉も、あのときのような感動…もうないや。
....
わたしは多分、
きみの優しさのハンガーに
ぶら下がっているだけなんだ
タンスにたたんで仕舞うと、
しわしわになって着れなくなる
お出かけ用のワンピースみたいに。
だから、
当たり ....
胃の中で日に日に育っていく
バオバブの木が
喉を突き破り
枝葉を広げて
灰色の空を深い緑色で包む日は
そう遠くないと
信じている、きみは
多分、
いつか年老いてしまっても
誰かを ....
水底に溜まった泥に眠る
虫の鼓動さえ聞こえるなら
蔓草の綱渡りをする
月の足音だって
するりと
耳に忍び込む
彼らのねっとりとしている涙は
さみしさで飽和してしまったせいだ
....
花に埋もれても
目を瞑っても
きみの匂い
きみの居場所がわかる なんとなく
そういう人になれたらいいな
と
雨樋を伝う水音を聞きながら
きみが帰った後の玄関に
いつまでも鍵をかけられな ....
思い出のなきがらを
脳髄からひっぱり出したくて
頭を掻き毟っても、
何度も剥がしたかさぶたが
消えない痕になるように
コピーされて
劣化しても
残っていく
濡れた睫毛は乾かない ....
きみは中から凍えていくようだけど
私はきみに触れている指先から凍傷になっていく
きみからぶら下がる氷柱が落ちて
私の足を貫くから
もうどこにも行けなくなるよ
私は冷たい水しか持ってい ....
まるで
淋しさを塗りこめた顔
化粧をした顔しか知らない女が
人肌の温度をした湯で顔を洗い流したときの
薄暗い失望
くちびるを手繰り寄せる
失望の詰まった袋にある
ほつれ ほつれ
....
指を絡めて、乾いた唇をそっと食む
カルピスの味、がする
喉にねっとりとべたつく原液を
そのまま飲み下す
甘いものでいっぱいになれば
傷から染み込んでたものは
溢れて流されていく?
....
おおうものが
なくなってしまえば、
ぜんしんで
ないていることをきがつかれてしまうから
ファンデーションでかおをおおい
つめにはきんいろのマニュキアをのせ
からだをコルセットでかため
....
乱暴に抱きしめたら
壊れるかもしれない
だけど、
それでも優しくなんかしないのは
きみの目に映る
ぼくの顔が
あまりに醜いからだ
なにも悪くないきみなのに
ぼくは憎たらしい ....
たとえば、きみに好きだよと
囁くときでも
ぼくはきみの、
背中を見つめたまま
きみがぼくに決して
そういう言葉を言わないのを知っているから
きみの白い猫背に囁く
ぼくは、たぶん、 ....
去年庭に埋めた
枇杷の種の、
芽が出るのを見れなかったこと
家に帰ると、
朝、家を出たときと
何一つ変わっていないこと
揃いのコ−ヒ−カップが
片方だけ古びていくこと
「バ ....
芝生の上に横たわると
青が見えた 鳥が見えた 飛行機が見えた
ふと影が差したと思ったら
白いシャツが落ちてきた
二階の窓から母さんがごめんと言った
ああ 天使かと思ったのに
地平線を隠してしまうときの
きみのつま先が好きだよ
肩甲骨を両手でまさぐりながら
そう 僕は小鳥も気がつかぬほどに
ちいさくつぶやいた
地平線が見えないなんて
くだらない永遠なんか ....
けはい
が、まず私を脅かし
におい
が、とりまく空気を包みこむ
たいおん
は、右腕から波のように
かんしょく
は、夢の中の現実
侵される 私
交じり合う のは
そば ....
とけるのは唇
あふれるのは 生温かい水
零れないよう
太い針で縫いつけて
不器用に 笑う
染み出す膿で
舌が焼ける
目を瞑り、
笑う
溜まった水は
まだ温かい
私 ....
月に手を伸ばして
閉じた指を開くの
そうら 見えるでしょう?
指の隙間から
あなたの瞳を刺す色が
薄ら白い色が
小さく歪んだ円が
背を向けたら
伸ばした手も空を切って
細 ....
すなを ふむ
ひかりのかたちをした すなを
さされば いたいよ
ひかりをかたどった すな
ながされてはやく
てのひらにむていこうなすなになりたい
すなお
にぎりしめて くずく ....
フュ−シャピンクの海を
ティ−スプ−ンで掬う
小匙1パイの海と、二つの地平線
いらない?
そうなの。
エメラルドグリ−ンの海、
痩せた指の隙間から零れ落ちる砂
でもね
私に ....
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