もう梅花もそのひとりごを嘆く頃
陰鬱な空から出発への涙がもたらされる
皐月と文月の橋を取り繕い
ただその涙に濡れるひとりごよ
育ち切った不幸は青い毒に
生まれたった刹那の風邪に乗 ....
ジェット機に乗ってそれはやってくる
音に染まってくたびれたヒマワリ
ちぎったサルビア アリの巣の大洪水
限りない荒野に 軟禁されたことを知る
道端に命を落とした蝉の自由な羽 ....
空の心に涙ひとすじ
空の巣箱に花は湧きだし
無尽蔵な青が照らすは
いつか見かけた空っぽの辞書
つくしが白紙に若葉をなぞり
若枝は手に手を取って
夏に誓った光 ....
そこに
ないものを見つけてしまう
あるものを探してしまう
街が闇に溺れる頃
ベルベットの水晶は全てを映した
油絵の波のタッチが心地いい
生物会議の議題は ....
神様の爪先からこぼれた水が
南極の氷になってアイスコーヒーを冷やしている
ふつふつと白く昇る泡が
46億年の想念とブラックホールを残していく
果てのない黒い海
....
17年 生と死の間を行きかいしていた
広い川の岸辺に佇んでいた
花びらに埋もれていた本を手に取った
沈丁花の香りがする
自分という深い湖の底に沈んでいく花
そ ....
5時限目 人の心を読む授業
鉛筆の影がノートに映る
あの子は几帳面に 鋭利な鉛筆を持って数式を解いている
僕は陽にあたりながら 丸っこくなった鉛筆を持って
πの可能性を ....
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