洗面器で泳ぐネオン色のグッピー
後悔の涙が雨になる
また水かさが増える
恥ずかしいのだと、女が泣く
後悔の涙が雨になる
また水かさが増えた
アイシャドーとマスカラの混ざる ....
紫の舌の上で踊る猫
チープなオレンジが香るタンバリンの音
首にパールを縫ったカラスが
風をかみちぎるようなコーラスを添える
酔っ払ったデブのビーバーを
階段の手擦りへ導く薄ピ ....
「あなたが相手どっていいのは結局のところ彼だけなのよ」
すっとなめらかな放物線を描いて彼女が指さした先には
波打つ筋肉も猛々しい牡牛がおりまして
つややかな黒毛が太陽の光をはじいて輝いており ....
アコースティックな歌はちぢれて
猿の毛玉とブランチの海
金切り声をあげる痴呆のポセイドン
人魚は女を捨ててしまった
オスは泣いて子を孕み
産み 育て
嘲われ
(オ ....
換気をしない寝室に置かれた重厚なベッド
ヤニ色のシーツ
飛び跳ねて遊んだ子供の名残
ベルベットのカーテン
隙間からこぼれたゼリー状の夕日
部屋にこごる朱
透明な朱色のゼリーの中 ....
「僕はブサイクだ」と嘆くルドルフが愛しくて仕方ない。
大きな鼻は真っ赤な色をしている。
(泣かないでちょうだい、私のかわいいトナカイさん。)
実際には届かない手で、私は彼の鼻を撫でる。
....
野イチゴ摘みに連れてって
もう夕方だけれど、そんな小さなことは忘れましょう
暗くなってもいいじゃない
月明りで摘みましょう
おいしくなくてもいいじゃない
野イチゴだってことが ....
さあ、選別なさい、と、老女がまっ黒な風呂敷を広げ、そこからごろごろ転がり出たのは、大きな頭をした、不恰好な木製の人形だった。
選別なさい。枯木のように固そうな手を伸べて、老女は子供を促す ....
逃げたウパニシャッドの行方
金色の
トリノス頭の少年が
のぼる のぼる
銀色の
逆巻く蛇の
背中をたどる
ガラスのウロコは六角形
剥がした下に
お肉のピンク
少年は
のぼる のぼる
六角形のガ ....
歌うなら声を殺して
くれぐれも僕に聞こえないよう
泣くなら声を張り上げて
喉が裂けて血がしぶくほど
恨まないで
嫌いなわけじゃない
ただ一緒にいたいだけ
換気扇の吐き出し口から、ファンの雑音に混じってすすり泣く声が聞こえます
外はこんなに天気がよくて
芝生の緑が鮮やかなのに。
グミの実についた水滴が光を含んできらめいています
軋んだ声で ....
猫がお爪でミモザボンボン
ぷしゅんと割ったら
月がこぼれた
裸足の人に降りかかって
足をびちゃびちゃ言わせながら
彼は森の協会へ
神父さんたらうっかりしてて
黒猫しまい忘れて ....
暗い海に揺れる小舟を
灯台の上で眺めている
開いたままの本のページは無遠慮な潮風にめくられて
『暴れ馬を乗りこなすことよりもよほど、老いぼれロバのたてがみなびかせ、颯爽と駆け足させること ....
掘り返せば死骸ばかりだ
蝉の脱け殻。皺ばんだ祖母の手
掘り返せば死骸ばかりだ
踏み躙られた残雪。子供のはしゃぎ声
掘り返せば死骸ばかりだ
必ずハッピーエンドで終わる物 ....
犬は従順でよろしい。猫は気ままでいけないよ。
賢い犬ほど痴愚と変わらない。猫は老賢者に似ている。自由で孤独だ。
僕は犬を望む。
俺は猫になりたい。
裸に海の膜を纏う
崖を繋ぐ羽毛の吊橋が足裏を優しくくすぐる
乾いて冷えきった太陽の光に背を押された
橋を辿った先に広がる光景は
眩しい新緑の髪がなびく草原だった
ああ
甘酸っぱい桃色の ....
その肌は月色に 氷のように透き通る
清く冷たく滑らかな白
その瞳は鯨色に 炎のように揺らめく
不思議を隠した群青色
少年は無造作にこちらに近寄り
「君のことならなんでも知ってるよ」
....
安っぽいラベンダー色の入浴剤
狭いアルミの浴槽
掃除が行き届いていないのか少し曇っている
格子状に並んだブルーのタイルの壁
黒ずんだ溝
オシャレなバスタイムなんて縁がないわ
排水溝に髪 ....
特殊な水で満たされたその保育器は柩でもある。
「抜け出るのなんて夢のまた夢」
隣の保育器=柩から、会話の続きのように声がかけられた。空気を震わす音でなく、脳髄に直接響く信号として。 ....
座右の銘 唯我独尊傍若無人 登場曲はダースベーダー
やべ、バレた!緊急避難! 階段を上る足音ティラノサウルス
「コンビニに今行きたいでしょ? 今、すぐに。プリン食べたいな。10分内に」 ....
青白い少女の額に広がった砂漠を進む柔らかな月
青白い夜を踏みわけいつからか銀の鱗でエラ呼吸して
どぶ川の面(おもて)を撫でる聖母の手 草枕する我に眠りを
一人分の影は夜気に溶 ....
糸を巻く手を止めてはいけない
私ができる唯一のこと
糸を巻く手を止めてはいけない
金のために食うために
糸を巻く手を止めてはいけない
自分に呼吸を許すため
糸を ....
狼が疾風となって駆けるのを
ぼくはただただ見送るばかりだ
(ぼくには強靱な脚がない)
狼が鋼となって獲物を狩るのを
ぼくはただただ見守るばかりだ
(ぼくには牙がなく爪もな ....
膝をついて
頭(こうべ)を垂れて
祈る姿勢で打ち拉がれて
水なんて飲んではだめ
小さなキスを送りましょう
乾いた土のような皮膚が、崩れない程度にそっと
お母さんが死んだからって ....
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