2月2日9時39分、雲ひとつない晴天、無風、湿度十六。
応答せよ、応答せよ。キリキリっという雑音が混じった青い声が鳴っている。
ポスターの陰で砂埃を被った無線機、その傍らには血溜まり、首元には ....
夜夢見る前に見えるんだ
溶けたチョコレートのような
天井が頬に垂れて来るのが。
ナメクジに両目を覆われて
ふるい落とそうとする首が
枕から頃げ落ちていき、
床でゴム毬のように ....
いかいかさん「荒地」
http://bungoku.jp/monthly/?name=%82%a2%82%a9%82%a2%82%a9#a06
荒地では存在というが存在が無視されていく。自然 ....
回収車が過ぎて
カーテンを捲る
暗さに吸い込まれる
首と刃
新月より
黒い瞳孔は広がり
見つめていた
夜の信号機
誰も通らない
誰も待たない
けれどわたしは観ている
道路 ....
毒矢を構える 待ち人が
噴水の傍らで 翼を折り
畳むことない 不敬
平面へ滑り 落ちていく
知識人、 いつか
煙突が 影を伸ばし
林立した時、
黄色い毒の 飛沫が ....
綿の飛び出た座椅子には
歯抜けの鼠がねむっている
尻尾もない、毛もない鼠が。
やがて
見つめているうちピクリと動いた
そしてその日
僕は、なにもできなかった
学芸会をやることになった。先生が教室に入ってくるなり、明るい表情に、楽しげな声調で言った。「笠子地蔵をやることになりました」と。俄かに教室は騒がしくなった。誰でもそうだが、人が集まるとこうい ....
キヨクアカルイ――君の生き方を見ると、そう言いつつ嘆息が漏れる。多くの声が聞こえてくるけれども、君の声だけは澄やかに聞こえる。他の声とは決定的に違う、芯を持っている、根をもっている。君の名前だ ....
海中を漂う砂粒が、潮流に弄ばれながらも、時には魚の口から鰓へ抜けながらも徐々に沈んでいく。天に在る日輪がその姿を鏡に映している、その鏡である美しい海面から離れて黒い海へと沈んでいく。それは途 ....
車窓はいまだ固まらず
七三キロにえぐられる
ぐにゃりぐにゃりと 鐘がなり
平たく 延び縮みした思いが
頭をぶちつけ 眼より飛ぶ
まどろみからはみ出す黒枝の
茂みの青い光をかきむし ....
横になる太陽は、 都市の襞に刺さる蝋燭へ、
際限なく転がり続けた、 葦を掲げた手の彼方に、
なにも焼かず、 なにも踏みつぶさず、
痛む大きなリンゴの腹へと、 終わりない夕景の
....
国道沿いに並ぶ電球の切れた街灯
いろあせた看板に描かれた
憧れの男たちはいつまでも
シニカルで力に満ちた笑いを崩さない
赤いくちびるに
金の短髪愛らしい ....
長袖を着た人たちが
向かう先へ行くとようやく
大都市の雰囲気 中央に巨大な塔もたっている
外から来たものだからこそ
その土地の歴史に思いを馳せたい
ダブリンはどういう町か
見て ....
電話ボックスに肩をよせ
誰かと話す知りあいのスペイン人
いつも人懐っこく笑う頬が重たげだった
こちらに気づいた彼はHi! と言った
Hi, とかえすと 急いで電話を切って
浜 ....
大半の笑顔など、虚飾に過ぎない。
だが、それでもきちんと満たすものがある、
だからもう、
れっきとした
嗜好品じゃないか。
金を払ってでも買いたい人は ....
一
この世で一番残酷なことは、
音も知らずに踊らされている、
幼い道化が道化と自覚するような
瞬間じゃないだろうか。
わたしがわたしと自覚して
しまうと ....
煙を出さなくなった工場の軒先で
ウールのベールが群れなして失せ、
熱線が迸り出た。裸体のまま曝された
石は砕け、散った、降った、青い羽根が
ハンチングに突き刺さる。
そしてまた羽ばた ....
雨降っていたけど
傘はいらない灰色の夕暮れ
窓越しに眺めていたが
なにかに恋い焦がれ
外には出たが
どこに行ける気もなく歩く
日当たりのよい植え込みと
車のあいだ抜けて
....
こんな夢を見た。階段を登っていたら丁度降りてきた人とすれ違った。
一つ登り切ると踊り場に靴が落ちていて拾った。
また一つ階段を登ると赤馬が尻尾を振っていた。
馬を連れまた一つ階段を登る。 ....
潔白な残雪をこそ愛さん、
残雪は陽に当たりて玉の如く輝く。
雪は清水を滲ませ具に燦めく肌整え、
芽吹きを助く恵みを与く、
涙の結氷種子を愛づ、
黒衣の無児、杖付き雪原踏み歩く、
傘を傾 ....
白黒の 狭間に出ずる 緑旗をば 合図に放つ 春の雷砲
アイスコーヒーが、溶けた氷に薄まる。
その前に飲みきろうとするわたしに、
オカマ野郎が、友達が欲しいだけでしょ、と言った。
もう両手が、袋に包まれていた。
....
握り潰され、踏み潰され
ひしゃげてしまった空き缶の中には
まだ誰かの生が底に残っている。
それがそのまま
路肩に投げ捨てされて転がっている、
溢れたゴミ箱から滑り落ちている。
木漏 ....
世界に伸びる影は 果てがない。
高層ビルは嘗て草原だった土地の上で立ちはだかり、
飛行機は嘗て届かぬ雲の上を滑りゆき、
断崖絶壁から人間は歩きはじめる。
鷲が飛ぶように 影は大地を ....
窓に寄りバイク走るを見届けて
パッチンパチン深爪の昼
時間を突き離したわたしはすでに、
わたしであることに疲れていた。
気球のように烏につつかれ瀬戸際に顔を打つ恐怖に、
疲れていた。そうでなくともボイラーは切れそうだった。
それからは無量 ....
街、都市計画は百年たってもまだつづく
しずみこんだ街の青い静脈で
渋滞しはじめた一台一台
濡れた車体はガス漏らし震える
なりをひそめたクラクション
....
帰る事を目指し歩いた/
鍵盤の足りない団地の/
複雑なカーブ/
赤い開渠を渡り/
点滅する青信号//
切り株を押し上げる巨石/
枯芝の広場にベンチが並ぶ/
あなたと腰掛け/
愛 ....
ぼくは立派なあほでありたいが、生憎まだただのあほだ。
※
ぼくは幼少期の頃から、「ありがとう」と「もうしわけない/ごめんなさい」が正に、漢字の「謝」のように表裏と感じられて、どう ....
驟雨降らるる海潮音 白む薄やみ夜明けまえ
浅く曲折 砂に続いた足跡辿り
この世は不幸
なのですかと思いひとりごち
風がさっと背を撫でる
その先で
裂 ....
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