粛然とした住宅外。
崩れた塀の蔭、
放置された飲みさしの瓶に浮いた虫。
赤レンガ倉庫と並ぶ
コンクリート工場で夢見た、
幼児の時間感覚。
そろそろ限界だったわたし
今ではどろ ....
好むな、そして崇めよ、
崇めればこそ、語りかけるな。
語る者は一度沈黙するべきだ、
沈黙する者は一度歌うべきだ。
※
趣味であるな、職業であるな、
生活であ ....
可憐なる小さき歌よ
わが喜びのあかしよ。
あわれ、今日このごろの春の時
行きては帰ることあらじ。
わが歌よ、なれを歌いきかせし
戯れの友もやがて去り行かん。
....
朝起きなさいと叩かれる畳
撒きあがるダニの死骸
目覚まし時計は横虐に喚く
「それは布団から出る事とは違う」
「ベルを黙らせれば済むことでもない」
けれど彼らは毎朝毎夕起きら ....
気の抜けたコカコーラ
絡まった線が抜けていたヘッドフォン
部屋から出られないわたし
扉よりも壁の向こうを気にして
耳澄ます
あなたの訪れをまつ
歌声だけでも
壁の凹みに大陸 ....
いまの楽しき日々を織りなして
夜の更けるほどに高まる二人の喜び。
終りを知らぬ二人の会話は
星の間を飛び交う電波。
そのまま夜明けを迎えて白む外
それも知らず、喜びは
行きつくとこ ....
ダムのサイレンが鳴った――
遠来の旅人はまさに無頼の男で、
己が生をあなたの扁桃体へ刻んでいった
――それは一つの警告だったのだろう。
思い出に鬱ぐあなたを召し迎えよう、
と、腕を廻し込 ....
四階のパソコン使い無為な歌書くわれの前はにちゃんねる見る
記すためノートに力込め書くもちびた鉛筆筆跡薄く
鉛筆を削る手に込めた力はただ廻す為ではないと思う
キー叩 ....
茎干からび転げる掘り起したままの花園に名もしれず
向日葵が花咲く中潜る蜂羨ましく思う夏過ぎ
自転車の百千並びに差す秋陽その長し影から出れずに寒し
歩き方忘れたように並木道 ....
黒板から不機嫌に拭き消された詩はノートの裏表紙に書かれていた。
知らなかっただろう、二日前にはまだ星が見えていた、窓から夜空が見渡せた、そこに硝子が割れずにあったことを。もう思い出せない ....
コンクリートの湿った空気
充満する教室
チョークの粉漂い
俺の肺を白くする
窓を破ることもない
弱々しい生徒の哄笑が
俺の鼓膜を腐らせる……
その賑わいを葬りたい!
教科書閉じ ....
学校で図工の時間ひとり自慢したやつの色
サムライブルー
男の子も女の子もみなもってぼくだけもたぬ
サムライブルー
ほしいけど文房具屋は売りきれてそれどんな色
サムライブル ....
苦しいですか、
そうですか、
それならそう、捨てに行きましょう
山奥に
ほとんど一目に付かないところに
捨てていきましょう
いいえ、止しときます
わたしの苦しみは ....
駅前の 賑やかしから 常緑樹
並木をくぐる 若人二人
そのうしろ 散歩する犬にほほえみ
ベンチ腰かけ 寒さ身にしみ
待ち合わせ相手はこない
ポッケから
リ ....
布団はだけ
腹が冷え痛んだ早朝
トイレ行って
また布団はいり
左手伸ばしカーテン開く
ああ、
なんて晴れがましい空
まだ朝焼けなのに
はやくも
暗転するほどまばゆい世界
世 ....
日陰なお
冷え切っている
青ざめた 枯れ枝ふんで
冬の湿り気
木立さす
日差しない中
転がった 小石けっても
飛ばぬ朝
マフラーを脱いだくびもとのあせばみ ....
さてこれは一つの『山月記』論である。
リルケの「若き詩人への手紙」(新潮文庫)の豊かで人を救う敬虔な文章に、
ぼくはすっかり夢中になっている。
だが、それだけではまるで読書 ....
眠りを効かない
薬に託す恥
ふさいでいく瞼
ふさがっていくだけの瞼
跳ねる足は冷え
閉じきった耳は誰かの声を聴く
それから起き
ひっぱた ....
それはある朝突然のこと
布団から身体を出せないのだ
まだ秋 寒さのせいじゃない
それからわたしは奇妙な薬を飲まされた
憂鬱な感情はそのままに
身体は動き 緊張はほぐされた
これを捨 ....
新聞を広げてぼくは思う
毎朝毎朝、これだけ世界の大事に
向き合うことが出来る人々が
どうしてなにも行動を起こせないのかと、
中国で反日デモが起きたからって
....
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