聞きたくもない音楽が隣から、ではなく私から聞こえてる
今そこにあった異界も永久に默せば数十キロの物体
人により造られしゆゑ人に似て鬼ら佇むホームの向かひ
みづからを見返すことのみ難くして眼は水底の波などを見つ
雨やまず やがて視界のまつしろな頁と化して捲らるるまで
半ば幻なる他者のさはさはと脳裏にさざめきながらまた夏
かくて在るかのやうに語るべきもの たとへば自我の同一性は
街灯の数ほど影は我に副ひそのうち一つのふと振り向きぬ
やはらかに頭蓋の内にゆらぎつつわれら物体として個なるも
しばらくをまたさまよひてゐたりけり我が脳裏なる白き沙漠に
死の如き眠りと死とを分かちつつ薄く瞼のひらかるる朝
目醒めては我を再び我と呼ぶこの誰なるかを知らず未だに
その森の外にも森があり星を違う名で呼ぶ人間がいる
理解より破壊がはるかに簡単にできる世界で出会う不幸よ
忘れるな 言葉は私が発しても意味を生むのは私ではない
意思疎通できると思っていたのだね たかが言葉がわかるくらいで
「人間」をやらなあかんというこれが、これがかなんのですわ、暑いし
これすべて人間の実例でして、「人間らしさ」とは何でしょう
ああしかし目の前のこの虚空すら窒素や酸素に充たされていて
主観的には何色であろうともひとまずあれは真っ青な空
もうかなり生きてしまってからやっと「生きてる」と知るようにできてる
ただ生きていればいいよと言われても、生きてるだけで疲れませんか
暑さすら雨すら制御できていない生き物の群の中の一匹
見えるもの聞こえるものがいかに美しいとしても、所詮世界だ
まだ何のかんのと言ってアバターの奥にも人の脳などがある
少し昔、画面の中に草原がそのまた中に窓があったね
気分さえ変えれば幸せにはなれる(なれるんだよな、残念ながら)
ささやかな幸福で生き延びてしまう人に凭れて生き延びる国
生まれると選べなかったあなたには悔いる資格もないはず、だけど
遺伝子を運ぶ気はもうないのだがこういうものなら運んでもいい
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