私とは、たとえば貝を操って遠くへ運ばせてゆく貝殻
ほらあのさガードレールの根元からひょろひょろ伸びる蔓のことだよ
パン屑のかわりに記号の断片を撒きつつ歩む ここもまた森
何を食べても結局はこの身体になってしまうというつまらなさ
飢えてから齧ったパンの耳はそりゃ旨かったけど、だからと言って
分け入れば分け入るほどに遭難の確率が高まる青い山
情報は、しかし溢れた方がいい われらを未来へ押し流すほど
システムは思想じゃないので考えを変えても脱け出せたりしないです
生きている、という異常な状態がまだ続くので写真を撮った
なめらかで白くて丸い快楽が発売と聞きやって来ました
君の書く「君」は私じゃないのだが君は私たちに宛てて書く
しかしこの無意味な生を ぱりぱりと海苔を砕いて飯に混ぜつつ
深淵はあらゆる足の下にあり、ほとんど大地のように確かだ
人間を超えた何かに記憶され……たくなくもない気がしたりして
ヒトがこの形を脱ぎ捨てるまでを見たかったなあと剥く落花生
深く暗く瞼とざせば、うん、そうね、世界はこんなにも美しい
鳥が飛んだから何だと思ったりして歌い出すのは難しい
文字化され数値化されてなお残る水蜜桃があるかどうかだ
殺しあうまでもなく皆死ぬのになあ、無駄だよなあと雨が言ってる
殺してやる、殺してやると叫ぶほど命を重視していたらしい
有能さ、無能さどちらで競っても一位にはなれない人の群
弱くても愚かでも生きていていいと 自分ではないものには言える
養ふに値せぬ身の幾億の一として我が身をも容さむ
戦ひを語らずわれら生き得しはかれらを戦はしめしゆゑとぞ
自然とは滅ぼすべからざる敵手 意識に於ける身体に似て
いつの日か人なべて去り果てしのち残らむ椅子の一脚の影
舞ふ塵の等しく軽きわれらにてただめくるめく差異を載せたる
ただ答へむ 生くるに値する命など曾てなく今もまたなし
抒情といふほどの情などなかりきと語れり 語るとは騙ること
人ふたり ふたつの世界 その域を侵しあひてぞ対話とはいふ
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