紅珊瑚のゆりかごの中で
柔らかな月が眠ってゐます
美しい薔薇が月にキスして・・・
(カステラの香り!)
薔薇に棘などありません
棘は一つ残らず
詩人の心臓が受け止めましたから
柔 ....
薔薇喰へば詩人
悔やみきれぬ漆黒の髪長し
萩散る恋散る
満腹猫の小憎らしさよ
雲間を逃げるホワイトジーンズ
欲しいものは淫らなギター
まばたきする度に薔薇
片 ....
公園で野良猫と遊んでゐたら、見知らぬ爺さんから声をかけられた「こんにちは!」
軽く会釈だけ返すと、満面の笑みを浮かべながら、また「こんにちは!」
孫と思しき青年が、私に何度も頭を下げてゐたが、爺さ ....
珈琲さへ飲まなければ失恋しなかった
珈琲さへ飲まなければ指は無くならなかった
珈琲さへ飲まなければ妻を刺さずにすんだ
珈琲さへ飲まなければ
珈琲さへ飲まなければぐっすりと眠 ....
一番目の男が言った。
「彼はいつになったら来るのだらう?」
「いや、彼はもう行ってしまったのさ」
と、二番目の男が言った。三番目の男は黙ってゐた。
「それを残して行ってしまった」
三人の男達 ....
「別れませう」とペリカンは言った
「別れてほしいの」
ペリカンは左を向き、片目で私を凝視する
潤んだ黒目が、一瞬灰色に濁る
写真を撮ったのだ
下のくちばしの袋が震へる
袋の中は、たっぷりの ....
大学に登校する途中
「月の光」のメロディのハミングを聴く
それに和して口笛を吹く
いつの間にか背後に二頭立ての馬車
御者は中学生くらゐの美しい少年
促されて乗り込むと、先客二名
中年の男と ....
「鬼婆の髪を見に行きませんか」
ローカル新聞社の記者から電話があった。
「或るお寺にですね、鬼婆の髪があるんですよ。そのルポを書いていただかうかと」
「インチキなんぢゃないの。拝観料とか取るのか ....
帰宅してみれば白い豚がゐるわけです
我がもの顔でテレビを見てゐるのです
えへらえへらと笑ってゐるのです
手と口がギトギトしてゐるのです
日本語を喋りますが通じないのです
「出テ行ッテクダ ....
朝早くにジョギングしてゐたら、急に雨が降ってきた。
最近の天気予報は、まったく当てにならない。
雨宿りするために歩道橋の下に駆け込むと、女が立ってゐた。
真っ赤なキャミソールを着た、痩せぎすの若 ....
桜色の腫瘍が
オー・ダーリン
僕の思ひは
揺らがぬ思ひは
混濁せるため息は
とめどなき摩擦は
極彩色の精液は
悲花蒼滝悪霊ラヴレタア朧 ....
子猫が一匹死にました
罪なき子猫よ
おまへの為に詩を書かう
∴
公園の駐車場に、三匹の子猫が居付くやうになったのは一ト月ほど前
母猫の姿はなく、生後まもなく捨てられたのに違ひない
....
休日に公園で本を読むのが好きだ。
園内では、緑を眺めることより他にすることがないから、読書に専念できる。
解し難い本を繙(ひもと)くのは公園に限る。
今一つの楽しみは、公園に巣くふ野良猫たち ....
母親は子の幸せなんぞ望んでやしない
子が己よりも幸せになることを、やっきになって妨害する
父親は底抜けの馬鹿
娘と結婚することを夢見
息子に尊敬されることを、ひたすら夢見る
....
今朝はとても寒かった
来週は立春だといふのに、何といふ寒さだらう
あまりに寒かったので、私の舌は凍りついてしまった
物言へぬ詩人に存在価値など無い
―――死んぢまへ!―――
実に冷た ....
凍りかけてる湖水のほとりで
ゆらゆらゆれてるあれは何?
あれは仔牛の頭蓋骨
あれは仔牛の頭蓋骨
ポッカリ開いた眼窩から
無常があふれ出てゐます
冬冬冬冬(トウトウトウトウ)
....
毎週末、私は長期入院してゐる祖母を見舞ふ。
今朝の祖母は、あまり調子が良くない様子で、口数も少なかった。
私は、いつものやうに、ポータブルトイレの処理をしたり、入れ歯を磨いたり。
一通り世話 ....
ジョギングするために公園に行くと、駐車場にパトカーが三台停まってゐた。
ピンク色の小さな軽自動車を、ぐるりと取り囲むやうにして停まってゐる。
盗難車でも見つかったのか知ら。
時刻は午前六時。 ....
湯せんにかけて
やはらかくなった冬の月に
銀河のアラザンをちらし
薔薇色の粉砂糖をまぶし
僕がひとかじり
君がひとかじり
微炭酸の夢が
恋人たちの舌の上を
ゆるりゆるりと ....
或る若き詩人に
§
意味のある人生とは何でせう?
食べて、仕事して、セックスして、寝る。
これこそが、意味のある人生です。
詩は無意味です。
詩なんか、なくとも生きてゆけ ....
ショッピングセンターの、ひとけの無い屋上駐車場に、子どものすすり泣く声が響いてゐる。
・・・と言ふと何やら怪談めいて聞こえるが、そんなロマンチックな話しではない。
誰が泣いてゐるのかと思へば、可愛 ....
寝て食べて
ちょっと甘えて
イヤなことスグに忘れる
猫の幸せ
好きなもの
陽だまり
うたた寝
マッサージ
カリカリ
ほら穴
トカゲのしっぽ
愛嬌をふりまきカリカリせしめた ....
冬めきてラディゲ読む夜の重さかな
幻滅と悔い残してや恋の冬
この星に我ひとりなり冬の雨
黙々と落ち葉掻きやる白痴かな
吸ひ殻と誇り捨てたり枯れむぐら
老媼の叫び響くや空ッ ....
「ちょっとお聞きしますが・・・」
生まれて初めて職務質問を受けた。
近所にある、簡易郵便局に寄った帰りのことである。
先日、防災用のごく小さな貯水池で、子供が溺れて死んだのだと言ふ。まだ、事件か ....
先達て、めづらしくチャットをした
WEB詩人の集まりだった
しばらく話してゐたら、かう言はれた
「三州さんは病気ぢゃないから」
ちょっと待てよ
だから何だ?
詩と、病気とは、何の関係も無い ....
お気に入りのサングラスが壊れてしまった
ブリッジがポッキリと折れてしまった
捨ててしまはうかとも思ったが、やはり修理に出すことにする
大晦日だった
歩くにつれ、わらわらと人が湧いてくる
....
月がポキリと折れてゐる
誰かが失恋したやうだ
静粛に!
静粛に!
詩人が失恋したぞ!
あいつめ、どんな詩を書くだらう?
恋が終はりかけると、きっと彼が現れる
優美なアンドロギュノ ....
「もしもし?」
全く、この街は気品だらけだ
もっとも、すべて道端に投げ捨てられてゐるが
「もしもし、私を誘惑してよ」
愛する人が気品を投げ捨てた時
私は注意したけれど
彼女は逆 ....
弄月無詩友
憂人惜暗香
秋宵如百歳
秋韻更千霜
月下詩情絶
星移大志荒
何時生一句
遮莫但醒狂
月を弄(もてあそ)べど詩友なし
憂人 暗香を惜しむ
秋宵 百歳の如し
秋韻 ....
ひんやりとした向ひ風が
私を包みこむ
日曜日の午前五時
さびれたアーケード街
まるで墨汁の海を
掻き分けるやうにして
灯りのないアーケード街を
私は一人駆け抜ける
若い女が泣き ....
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