その夜
 黒い猫が
 私の前を横切って
 あなたへの愛を
 植えつけていった
 私の耳元に
 ふっと
 小さな鼻息が残った
 誰かと一体として生きることを望むのは
 愚にもつかない愚
 皮膚一枚を隔てた男(ひと)の中には
 わたしへの異物が渦巻いている
 
 さて思い切ってその内臓のなかに腕をつっこんで
 あな ....
 つい
 これがまた
 癖のように
 パソコンの
 スタートボタンを押して
 それで何かが
 始まるような
 気分でいる

  画面の陰に
  立ち上がる
  1匹
  なにも ....
 +++++


 わたしは
 さみしいので
 ご飯をよそった

     @ぴこぴこぴこぴこ+@+@


 立ち上る湯気の向こう側に

 わたしの言葉の
 羅列
     ....
 コトリとした
 小さな違和感を
 いつもいつも大切にして
 彼女は生きてきました

 胸の中で
 コトリと鳴るたび
 どうしてだろう
 と問いかけてきました

 どうしてだろう ....
 今ごろあなたは
 大都会のビルの合間を縫って
 薄汚れた地下鉄の階段を
 降りていくころだろうか
 新しいジャケットに身を包み
 ほおに少し疲れたしわを漂わせて

  一昨日 真昼のベ ....
 私は 愛する人に 出会った
 私は世界を突き抜けた

 あなたの腕の中で
 原点の私に還る

 私はそこで生まれ
 おそらくそこに還る
 悲しみを何度も浄化し
 研ぎ澄まされた透 ....
 その昔
 はるか彼方で
 落としてしまったもの
 探しに出かけます
 
 もういいかい
 もういいよ
  
 細い声を頼りに

 さらさらとささやく木々の言葉
 滴るしずく
 ....
 私と同じ名前の
 69歳の女性が きょう
 軽自動車で踏み切りをわたる途中
 特急電車とぶつかって 死んだ
 
 昼のニュースでは
 まだ新しい彼女のオレンジ色の車に
 鋭利なフォルム ....
 違う道を選んでいたらどうなったか
 二通り再現してみるドラマが
 昔 とても流行ったことがある

 あの時、あんなことをいわなかったら
 あの時、あの人に会わなかったら
 あの時、電話を ....
 出発を告げる笛の音 闇を裂く 背中押されるままに乗り込む

 さようなら 吐息の窓に書いた文字 消えるころにはすべてが終わる

 逆向きの電車に乗れば初夏(はつなつ)の第一話まで帰れるはずだ ....
約束の日が待ち遠し 指を折り 折々君への思いも募る

効率という言葉から程遠く 君待つ時はただ過ぎていく

募らせて逢う時のため凍てついた手足の固さ心に刻む

玄関に近づく足音聞きながら  ....
 季節はずれの大雪は
 なごり雪と呼ぶにはあまりに冷たい
 ミディアムボディのワインでは
 何一つ暖まらない一人部屋で
 一夜が過ぎた

 赤縁のめがねと
 灰色のマフラーで
 私を覆 ....
駆け込めば乗れたかもしれない電車「危険ですから」我は見送る

この手から生まれた飛行機 美しくなくてもいいけど飛べその翼で

また一歩一歩と近づく頂上は私の目指す場所だったろうか

少年は ....
空爆に叫ぶ地もあり どんよりと優雅な午後のこの一時に

雨よりももっと激しい晴れの日が過ぎていく 広い広い世界で

対岸の大病院の灯り皆消えて 天井の闇 見つめる人も

台風の接近告げる声 ....
気がつくと私は青い海の部品の一つで
どこまでもどこまでも沈んでいく
重力をなくした体は
潮をはらんでふやけたまま 
これは落下、と呼ぶのだろうか
そうか 海の底は青くなんてないんだ

こ ....
無造作に枯れ花捨てる気安さで 我も誰かを傷つけ来たり

マニキュアの光は鈍く武器にすらならぬ女の小道具として

雲隠れしたのはわたし 月もまた夕雲の陰泣いているだろう

愛こそが熱の媒体  ....
 ラジオから録った尻切れトンボの音楽
 かじりつくように何度も繰り返しを聴いていた
 重低音が鳴らないスピーカーから
 シャカシャカとチープな音を奏でるロックンロール
 聞き取れないまま書き取 ....
 夜の道標 風の音が聞こえない日は
 途方に暮れてただ通り過ぎるのをまっている
 ほんの少し耳をすませて
 心の中の何かが動く音を聞いてごらん
 今までの軌跡が 何かを教えてくれる
灰皿につもる吸殻 砂時計よりも確かに時を刻んで

思春期は置いてけぼりで悼みすらなく見上げいる二十歳の空よ

夕焼けに溶かされてしまえ 毎日をつくる形のあるものすべて

くすぶってむしばん ....
吾の中に沈んだ言葉掘り返す道具を空に忘れてきたり

一人でもよし我が言葉狂うほど愛する人と出会ってみたく

稚なさを勢いで継ぐ時期は過ぎ底をさぐれど我見つからず

雪降らぬあたたかき冬 成 ....
 そこには
 斬新な空があった
 お手玉のように言葉を放りなげて
 駆け出してゆきたくなる
 そんな空があった
 
 ああわたしも
 多分飛ぶことができる
 一つの塊
 
 そうわ ....
 考えないで走る ひとつのことを思って走る
 立ち止まったら最後 二度と走れないかもしれないもの
 考えないで走る ただひたすらに走る
 迷ったら最後 時の迷路は永遠
 それでも感じてる ほて ....
伊那 果(53)
タイトル カテゴリ Point 日付
シャノワール自由詩208/8/1 13:31
異物自由詩008/5/12 14:13
ブラインド・タッチ自由詩208/5/10 22:12
デジタル自由詩2*08/4/26 17:05
コトリ自由詩108/4/19 13:09
疲れた羽根自由詩4*08/4/17 14:08
孤独の島自由詩608/4/16 0:38
落しもの自由詩308/4/14 15:18
小さな追悼自由詩108/3/20 13:20
if もしも自由詩108/3/19 12:59
【短歌祭参加作品】最終電車短歌308/3/19 12:39
悲しみよ こんばんは短歌508/3/11 23:08
3月の雪自由詩2*08/3/6 13:31
いびつな箱短歌5*08/3/3 21:11
世界のパーツの一つとしての短歌4*08/2/29 14:49
シュノーケル自由詩5*08/2/27 14:07
別れの一日(ひとひ)短歌4*08/2/27 13:39
Radio Cassette recorder自由詩3*08/2/27 0:07
道標自由詩0*08/2/25 14:10
二十歳のころ②短歌2*08/2/25 14:06
二十歳のころ短歌508/2/24 13:58
空のあおさに自由詩3*08/2/24 13:47
走る自由詩3*08/2/23 12:45

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